歯科口腔外科

診療・各部門

対象疾患

顎変形症(下顎前突症、上顎前突症など)、外傷(顎骨骨折、歯牙脱臼、軟組織裂傷など)、口腔粘膜疾患(難治性口内炎、白板症、扁平苔癬など)、炎症(智歯周囲炎、顎骨骨髄炎、BRONJ、顔面・頸部蜂窩織炎など)、顎関節疾患(顎関節症、顎関節脱臼、顎関節強直症など)、唾液腺疾患(唾石症、唾液腺炎、シェーグレン症候群)、神経疾患(三叉神経痛、舌痛症、味覚障害など)、口腔内軟部腫瘍・嚢胞(粘液嚢胞、線維腫、唾液腺腫瘍など)、顎骨腫瘍・嚢胞(エナメル上皮腫、角化嚢胞性歯原性腫瘍、歯根嚢胞など)、歯牙・歯周疾患(智歯抜歯、歯牙移植、インプラント)、睡眠時無呼吸症候群(スリープスプリント療法)、基礎疾患を有する患者(心疾患・糖尿病・脳血管障害など)の一般歯科治療

主たる診療内容と特色

当科は、口腔外科を専門とする歯科医師による診療科です。診療は、地域の歯科医院や病院からご紹介いただいた患者さんの口腔外科診療と、当院に入院・通院されている患者さんの歯科診療(虫歯や入れ歯など)を行っています。また、院内多職種(医師、看護師、管理栄養士、言語療法士、薬剤師など)によるチーム医療を実践し、嚥下機能評価や口腔ケアを行い、誤嚥性肺炎の予防に努めています。
紹介患者さんの6割は親知らずなどの抜歯手術です。抜歯に対する不安、緊張の強い患者さんには静脈鎮静法や全身麻酔を併用し、手術中の痛みを緩和する方法をとっております。その際は入院が必要となりますが、複数の親知らずを同時に抜歯することも可能ですので、治療期間が短縮されます。
また、当院のインプラント治療は、顎骨CTを3次元解析し、より安心・安全な医療を行っております。なお、術前顎骨CT解析は近隣歯科医院からの診断依頼も受けており、当院を受診されていない患者さんにも安心してインプラント治療を受けていただけるよう歯科医院と連携しております。
当科のスタッフは、常勤歯科医師2名、非常勤歯科医師5名、歯科衛生士3名、臨床研修医1名です。

スタッフプロフィール

医師名専門領域/資格一言コメント
業績等
【医師】
良知 麻衣子
(らち まいこ)
良知麻衣子
(昭和大学卒)
所属・出身医局:昭和大学顎顔面口腔外科
<専門領域>
口腔外科
<資格>
日本口腔外科学会専門医、
ジャパンオーラルヘルス学会認定医
歯科医師臨床研修医指導医
歯学博士
地域の先生方や医科の先生方と連携を図り治療を行ってまいります。
 
【非常勤医師】
大橋 勝
(おおはし まさる)
大橋勝
(昭和大学卒)
(最終学歴:昭和大学大学院)
所属・出身医局:昭和大学顎顔面口腔外科
<専門領域>
口腔外科
<資格>
日本口腔外科学会専門医
日本有病者歯科医療学会認定医・専門医
日本スポーツ協会公認スポーツデンティスト
日本口腔ケア学会認定医
ICD(インフェクションコントロールドクター)
ジャパンオーラルヘルス学会認定医・評議委員
歯科医師臨床研修医指導医
口腔外科の立場からスポーツにかかわる国民の健康管理、スポーツ外傷の予防と治療、アスリート支援等を行ってまいります。
 
歯科口腔外科

歯科口腔外科

歯科口腔外科

地域のみなさんへのメッセージ

私たちは「病院の中の歯医者」です。
私たちの治療には2つの特色があります。
1つは、当院(他科)に通院している患者さんに対する歯科治療です。高血圧や心疾患、糖尿病などの基礎疾患を有する患者さんには、主治医と相談しながら治療を行う場合があります。また車椅子などお体の不自由な患者さんには、できる限り他科受診日に合わせて治療を行います。
もう1つは、口腔外科手術を必要とする患者さんの治療です。患者さんの多くは近隣の歯科医院では対応できない親知らずの抜歯や腫瘍の手術です。その他、診断や治療の難しい口内炎、顎関節症、顔面痛なども診療いたします。詳しくは「主な疾患」をご参照ください。
当科の医師は全員が口腔外科を専門としています。
虫歯や歯槽膿漏(歯周病)、入れ歯の治療などは近隣の歯科医院を紹介させていただくことがございますので、ご了承ください。

主な口腔外科疾患

顎変形症

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受け口や出っ歯は個性の一つとも言えますが、発音、咀嚼(そしゃく)障害を来したり、著しい顔面の変形を生じた状態を顎変形症といいます。一般的にはそれほど認知されていませんが、顎変形症の治療は健康保険が適応されています。
顎変形症は、あご骨(上顎骨・下顎骨)の大きさや形、位置関係の異常によって生じるため、レントゲン写真、口腔内写真、および歯列模型などの資料から日本人平均値との比較分析を行い、手術の必要性を解析します。 顎変形症と診断された場合、手術までに歯の矯正(歯列矯正)を1~2年間行い、上下の歯並びのバランスを合わせてから手術を行います。手術終了後はさらに術後矯正として1~2年程度歯列矯正が必要となります。

手術は全身麻酔で行い、顎骨変形の程度によって手術方法が異なります。日本人では受け口(下顎前突症)が顎変形症の7割を占めており、当院では両側下顎枝 矢状分割術の施術例が多いです。以前は骨の固定にチタンプレートを使用し、術後1年以降に再度入院してチタンプレートを除去しておりました。近年は主に吸 収性プレートを用いておりますので、除去手術の必要がありません。 入院期間は2週間程度で、上下の口を結紮する(顎間固定)期間は5~7日程度です。
顎骨の形態や骨の移動量によって矯正期間や術式、プレート固定方法、顎間固定期間などは異なります。また、下唇、オトガイ部(顎の皮膚)に痺れ感などの後遺症が出現する可能性もありますので、術前によく主治医と相談させていただきます。

抜歯

顎骨に埋伏した親知らずや、虫歯・歯周病の進行した歯を抜歯します。当院では、顎の深部に埋伏した歯の抜歯や、恐怖心の強い患者さんには無痛治療を行っております。

歯の欠損症(インプラント

大切な歯を失った、または抜歯しなければならなくなった場合に、あごの骨に人工の歯根・インプラントを埋め込み、その上に人工の歯をつくります。
失った歯の修復法として、従来はブリッジや入れ歯を入れることにより機能を補ってきました。しかしこうした代用物には、隣の健康な歯を削らなければならない、上手く噛めない、食べられないといった問題がありました。 インプラントなら天然の歯とほとんど同じ感覚で噛むことができます。

外傷

口腔顎顔面領域の外傷は顎骨・顎関節・頬骨・鼻骨など顔面を形成する骨の骨折や、顔面皮膚や口腔粘膜などの軟組織の損傷、そして歯の破折や脱臼などを伴う 場合が多くみられます。骨折している場合はかみ合わせがずれてしまっていることが多く、そのような場合には手術による整復が必要になります。軟組織損傷に は特殊な縫合糸で瘢痕をなるべく残さないよう丁寧に縫合する必要があります。歯が抜けてしまった(完全脱落)場合には、決して抜けた歯を拭き取らず、生理 食塩水か牛乳などに浸してお持ち下さい。もしもいずれも持ち合わせていなければ、抜けた歯を口の中に含んでなるべく早く来院してください。条件がよければ 再度生着することがあります。

嚢胞(のうほう)

嚢胞とは顎骨内や粘膜内などに発生する膿や唾液の袋です。痛みなどの症状が無いまま徐々に大きくなっていくものが多いため、偶然レントゲンで見つけられることがあります。放置しておくと顎骨が弱くなり、容易に骨折する場合があります。また、唇や頬粘膜に水ぶくれ(粘液嚢胞)ができることもあります。

口腔粘膜疾患

アフタ性口内炎、ウィルス・細菌感染による難治性口内炎、自己免疫疾患による粘膜炎、白板症や紅斑症などの前癌病変などがあり、放置しておくと悪性化(癌化)する疾患もあります。また、口腔内常在菌の一種であるカンジダ菌感染(カンジダ症)でも粘膜炎を起こします。

舌痛症

舌の先端や側縁がやけどしたようにヒリヒリ痛む患者さんが最近増加傾向にあります。その原因は多岐に渡り、舌癌などを心配して発症することもあります。また、血清亜鉛の欠乏や、カンジダ菌が原因の場合もありますので、まずは検査を行い的確な治療を行います。

顎関節疾患

顎関節症は歯科の三大疾患の1つともいわれ、口の開閉時の疼痛、口が開かない(開口障害)、開閉口時の顎関節雑音などの症状を特徴とします。ストレスや食 いしばり、習癖、職業などなど、原因は多数考えられます。顎の安静が必要となりますので、上下の歯が接触しないよう心がけていただきます。また、口腔内に スプリント(マウスピースに似た装置)を装着したり、関節腔を洗浄したりして治療を行います。その他にも顎関節の先天異常および発育異常、脱臼、骨折など の外傷性病変、リウマチによる関節炎、変形性関節症など多くの疾患があります。

炎症

虫歯や歯周病からの細菌感染(歯性感染症)に対して、内服薬で制御できない場合には長時間作用する抗菌薬を外来で連日点滴投与を行います。それでも制御できない場合は、入院で1日2回の点滴投与が必要となる場合があります。

腫瘍(悪性腫瘍・良性腫瘍)

口腔内にも良性腫瘍と悪性腫瘍ができます。おもに舌や歯肉などの軟組織が占めますが、顎骨に発生することもあります。悪性腫瘍の治療は、手術や抗癌剤(化 学療法)、放射線療法、免疫療法などがありますが、咀嚼(噛む)、嚥下(飲み込む)、発音などの機能に障害を来す可能性がありますので、専門病院ご紹介す ることがあります。良性腫瘍の中にも癌化する可能性を持った病変がありますので、切除すべきか入念に診査・診断いたします。

ドライマウス

口腔乾燥症の原因には加齢、放射線治療、シェーグレン症候群などがあります。まず口腔水分計で簡易検査を行い、シェーグレン症候群と鑑別するために唾液分 泌テスト、口唇腺の病理組織検査、ドライアイ検査、自己抗体の血液検査などで精査します。治療は、含嗽剤、人工唾液、唾液分泌促進剤などを用い、QOLを 高めながら口腔内を管理します。

開催年月日学会・研究会名場所発表論文(タイトル)著者(発表者)特記事項
2016年12月17日日本歯科人間ドック学会 第19回学術大会徳島当院における口腔癌健診の試み大橋 勝 
2017年4月27日社会保険診療報酬支払基金 東京支部 学術講演会池袋抗血栓療法患者の抜歯大橋 勝 
2017年6月10日JCHO東京高輪病院 市民公開講座高輪お口のおとろえ - オーラルフレイル -大橋 勝 
2017年10月20日第62回日本口腔外科学会総会・学術大会京都造血器疾患患者の移植前スクリーニング検査における臨床統計的検討小池 正睦 
2018年2月16日港区芝高齢者支援センター講演会三田むせやすさや噛む力の低下について大橋 勝 
2018年6月16日昭和大学同窓会東京支部北千束平成30年度診療報酬改定講習会大橋 勝 
著書著者
歯科におけるくすりの使い方 2015-2018
;高血圧症;194-197, 2014年, デンタルダイヤモンド社
山本雅人、大橋勝
論文著者
2016年12月25日 日本顎顔面インプラント学会誌 第15巻 第4号
インプラントが上顎洞に迷入した5症例
小池 正睦