診療・各部門
・肩関節はヒトの関節の中で最も可動域の広い関節です。可動域が広いということは言い換えれば不安定ということになります。そのためヒトの関節の中で最も脱臼しやすい関節でもあります。
・原因としては外傷による脱臼はもちろん、てんかんによる痙攣発作や神経麻痺によっても起きます。外傷性脱臼ではラグビーやアメリカンフットボール、柔道などコリジョンスポーツによるものが多いですが転倒や交通事故によっても発生します。またもともとの関節の緩さ(関節弛緩性)による脱臼もあります。
・比較的若い方ではバンカート損傷と呼ばれる関節唇損傷を起こしやすいですが関節包靭帯自体が断裂する事もありますし、ご高齢の方では腱板断裂を起こしていることもあります。これらはMRI検査によって診断します。
・治療法は保存療法と手術療法に分かれます。以前は初回脱臼は保存療法が主体でしたが、特に若年者においては反復性脱臼への移行率の高さから手術療法を選択することも増えてきています。
・手術療法は関節鏡下バンカート修復術を主軸にいくつかの追加処置(Remplissageなど)、MICS法(Modified Inferior Capsular Shift法)やBristow法を組み合わせて行います。全身の関節弛緩性や競技種目、骨形態の変形の程度、年齢などを考慮して手術方法を選択していきます。
・術後は約3週間アームスリングで安静ののち可動域訓練等を開始していきます。術後6か月程度での競技復帰を目標にリハビリを行っていきます。
【関節鏡下バンカート修復術(Arthroscopic Bankart Repair:ABR法)】



【Remplissage】


上腕骨頭後上方の骨欠損をHill-Sachs lesionと呼びます。
ここを腱板で補填するのがRemplissageです。