重症腋窩多汗症

夏を前に『わきの汗』でお悩みの患者様は多いのではないでしょうか

わき汗のボトックス注射が2012年11月より保険適応となりました。
保険適用によってわき汗でお悩みの多くの患者様が、質の高い治療を少ない経済的負担で受けられるようになりました。たくさんの患者様に安心して治療を受けて頂き、悩みから解放されることを願っております。

そもそも腋窩多汗症とは??

汗を多くかく病気(多汗症)の中でも特に脇に集中することを腋窩多汗症と言い、日本人全体の10%弱に認められる頻度の高い病気です。腋窩の発汗は、気持ちの面からも温度の面からも影響されます。わき汗びっしょり、という嫌な経験をされる方も多いのではないでしょうか。腋窩多汗症は、患者様の日常生活にダメージを与え、生活の質を著しく低下させてしまいます。

腋窩多汗症の保険適応について

ボトックス注射の保険適応が通ったのは、「重度の原発性腋窩多汗症」です。すなわち、ただ単にわき汗が多いというのでは保険適応とならず、一定の基準を満たす患者様に対してボトックス注射が保険適応となったという訳です。

保険適応となる基準

▼原発性局所多汗症の判断基準

原因不明の過剰な局所性発汗が6ヵ月以上続いていることに加え、以下の6項目中2項目以上を満たす

  • 両側性かつ左右対称性に多汗がみられる
  • 多汗によって日常生活に支障が生じている
  • 週1回以上の頻度で多汗エピソードがみられる
  • 25歳未満で発症した
  • 家族歴がある
  • 睡眠時は局所性の発汗がみられない

以下の3または4であること

▼原発性局所多汗症の判断基準

  • Hyperhidrosis Diseaseb Severity Scale(HDSS)
  1. 発汗は全く気にならず、日常生活に支障がない
  2. 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
  3. 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
  4. 発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある

以上⓵から⓷の診断基準を満たす患者様は原発性腋窩多汗症と診断され、保険適応となります。
(わき汗で深刻にお悩みの方であれば、大部分診断基準を満たすものと思われます。)

なぜボトックス注射がわき汗に効果的なのか?

汗が出るということは、アセチルコリンという神経伝達物質(下の図の赤い点)により、神経から信号が伝えられた結果です。ボトックスは、アセチルコリンの放出を阻害し、神経から汗の腺への情報伝達を遮断することで発汗を抑制します。遮断された伝達は4~9ヵ月持続しますので、夏前にボトックスを行うと一番汗をかきやすい時期を快適に過ごすことができます。

治療の流れ

  1. まず問診にて、診断基準を満たすかどうか判定を行います。
  2. 施術前に必要な採血などを行います。
  3. 同意書にサインをいただきます。
  4. ご予約をいただきます。
  5. 施術日にご来院いただきます。
  6. 両脇に麻酔クリームを塗り20分程おきます。
  7. 両脇にマーキングを行います。
  8. ボトックスを片方あたり10〜15箇所ほど投与します。

費用

保険適応の患者様で、合計30,000円程度となります。

治療にかかる時間

初回:10分程度
施術日:15分程度(施術前に麻酔クリームを塗るため20分程お時間を頂きます)
※禁忌

次の患者様は治療を受けることが出来ません。

  • 全身性の筋力低下を起こす病気をお持ちの患者様(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、筋萎縮性側索硬化症等)
  • 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳中の患者様
  • 本剤の成分に対して、発疹などのアレルギーを起こしたことのある患者様

JCHO東京高輪病院 皮膚科のこだわり

患者様の満足のいく治療を心がけております。当院の皮膚科医全員がボトックス講習を修了しております。特殊な麻酔を行い、さらに非常に細い針で注射しますので痛みはほとんどありません。緻密な注入ポイントをデザインし、ムラなく効果を発揮させます。

Q&A

Q.わき汗が気になるのですが、ボトックス注射の保険がききますか?

A.残念ながら必ずしもわき汗が気になる方全員が保険適応という訳ではありません。原発性局所多汗症の診断を充たし、重症であることが必要です。しかしわき汗で深刻にお悩みの方であれば、大部分診断基準を満たすものと思われます。まずは一度ご相談ください。

Q.治療は痛みますか?

A.注射の際、多少痛みがあります。当院皮膚科は全員がボトックス講習を修了しており、多数のボトックス注射の経験を持ちます。極細の針を使ったり、特殊な麻酔クリームを併用しますので痛みを最小限に食い止めます。

Q.ボトックス注射後、注意することはありませんか?

A.注射後、当日は飲酒、激しい運動、注射部位(わき)のマッサージを控えていただきます。

Q.いつから効いてきますか?

A.注射後2〜3日で効果が現れてきます。

Q.どれくらい効果がありますか?

A.4〜9ヶ月効果があるとされています。

Q.何ヶ月に一度、注射をしないといけませんか?

A.効果は4〜9ヶ月程度と言われています。夏前にボトックスを行うと一番汗をかきやすい時期を快適に過ごすことができます。当院でも夏前に注射される方が多いです。

Q.副作用に付いて教えてください。

A.副作用はまれとされています。原発性腋窩多汗症患者を対象とした国内臨床試験において、総症例144例中3例(2.08%)に副作用が報告されました。その内訳は発汗3例(2.08%)、四肢痛1例(0.69%)であったとされています。 すなわち、腋窩の汗は抑えられたのですが、首や背中の発汗が増えたという方は2.08%、腕の痛みを感じた方が0.69%いらっしゃったとのことです。

Q.多汗症の治療にはほかにどんな種類があるのですか?

A.ボツリヌス療法(ボトックス)・塗り薬(外用薬)・飲み薬(内用薬)・手術などがあります。 当院ではボトックスのほかに塗り薬(外用薬)も取り扱っております。

最後に

夏本番、これから汗をかきやすい季節になります。老若男女問わず、汗の悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
「ボトックス療法について詳しく聞きたい」「汗のことで悩んでいる」など些細なことでも構いませんので、まずはお気軽にご相談ください。
また当院では自費診療による美白治療なども行っております。関心をお持ちでしたらこちらも是非ご相談ください。